Amazon Adsは2026年7月22日、Amazon DSPのAI活用キャンペーンであるBrand+とPerformance+に、10の新機能を追加したと発表しました。1PオーディエンスをAI最適化の入力に使うAudience Signals、音声広告、Prime Videoのシグナル、リマーケティングモデルの改善などが含まれます。
ただし、10機能が日本ですべて同じ条件で利用できるわけではありません。GA(一般提供)とOpen Betaが混在し、Audioは日本では3P供給のみ、Brand+ STVのAutomatic Deal Selectionは米国限定です。この記事では、2026年8月21日時点のAmazon公式情報をもとに、Brand+とPerformance+の違い、10機能、日本での確認事項、導入手順を整理します。
この記事のポイント
- Brand+は認知・エンゲージメントなど上流目的、Performance+は獲得・再来訪・維持などコンバージョン寄りの目的をAIで最適化するAmazon DSPのキャンペーンです。
- 2026年7月の10機能は、1Pデータ活用、音声・STVの供給拡張、モデル・シグナル改善の3群に分けると理解しやすくなります。
- 日本は告知対象地域に含まれますが、GA・Open Beta、供給元、広告主種別、アカウントごとのアクセス条件を実施前に確認します。
Amazon Brand+とPerformance+とは
Brand+は、Amazon Adsがブランド認知やエンゲージメントのために提供するAI活用キャンペーンです。プロスペクティングを中心に、ディスプレイ、オンライン動画、ストリーミングTVなどを使い、リーチや動画視聴といった上流の目標から設計します。2026年1月に、日本を含む世界のAmazon Ads広告主へ一般提供されたと公式発表されています。
Performance+は、Amazon DSPでAmazon内外のコンバージョン目標を支援するAIソリューションです。Customer Acquisition(新規顧客獲得)、Remarketing(再来訪)、Retention(既存顧客維持)などの施策を選び、ROASやCPAなどの目標へ向けて入札と配信を最適化します。
どちらも「AIに完全に任せて管理不能になる」仕組みではありません。Amazon公式は、地域、広告形式、在庫、デバイス、時間帯、除外、brand safety、フリークエンシーなどの制御を維持できると説明しています。Amazon DSPの配信面や費用の全体像は、Amazon DSPの解説記事で確認してください。
Brand+とPerformance+の違い
両者の違いは、ファネルの位置だけでなく、最適化へ渡す目標と評価指標にあります。
比較項目 | Brand+ | Performance+ |
|---|---|---|
主な役割 | 認知、リーチ、動画視聴、ブランド関連行動 | 新規獲得、検討、リマーケティング、リテンション、コンバージョン |
代表的な施策 | Prospecting、Reach goal | Customer Acquisition、Unified Consideration、Remarketing、Retention |
主な入力 | Amazonのショッピング・視聴シグナル、Audience Signals | Amazonのシグナル、コンバージョンイベント、Audience Signals |
主な形式 | Display、OLV、STV、Audio | Display、OLV、STV、Audio(Open Beta) |
設計の起点 | どのブランド成果を増やしたいか | どの行動・コンバージョンを最適化したいか |
認知と獲得を一つのキャンペーンへ混ぜるのではなく、Brand+とPerformance+で役割を分け、評価期間とKPIを先に固定します。Amazonで販売するエンデミック広告主と、自社サイト・アプリで成果を計測するノンエンデミック広告主では、利用するコンバージョンソースも異なります。
2026年7月発表のAI広告10新機能
Amazon公式は、10機能を「Simplicity」「Scale」「Performance」の3群で説明しています。提供状況は2026年7月22日の告知時点です。
# | 機能 | 対象 | 提供状況 | 役割 |
|---|---|---|---|---|
1 | Audience Signals for Brand+ | Brand+ Prospecting | Open Beta | Ads Data Manager経由の1PオーディエンスをAI最適化入力に使う |
2 | Audience Signals for Performance+ | Customer Acquisition / Unified Consideration | Open Beta | 1Pオーディエンスで最適化の学習を補助する |
3 | Audio for Brand+ | Brand+ | GA | 音声フォーマットと供給を拡張する |
4 | Audio for Performance+ | Performance+各施策 | Open Beta | 獲得・検討・再来訪・維持に音声を追加する |
5 | Automatic Deal Selection for Brand+ STV | Brand+ STV Prospecting | Open Beta | 複数のプレミアムSTVディールを自動で選択・最適化する |
6 | Managed Service Campaign Proposal Builder | Brand+ / Performance+ | GA | AMGのマネージドサービスで統一提案フローを使う |
7 | Brand Outcome Optimization | Brand+ | Open Beta | ブランド検索、詳細ページ閲覧、カート追加などの可能性を予測する |
8 | Prime Video Signal Integration | Brand+ | Open Beta | Prime Videoの視聴行動をランキングへ反映する |
9 | Asynchronous Remarketing for Performance+ | Remarketing / Retention | GA | recency、frequency、dwell timeを入札時の評価へ使う |
10 | Expanded Conversion Support for App Ads | Performance+ Remarketing | GA | MMP由来の「Other」コンバージョンを利用可能にする |
Audience Signalsは、指定した顧客リストだけへ配信するhard targetingではありません。広告主オーディエンスやAMCで作成したカスタムオーディエンスをAI最適化の入力として渡しつつ、モデルはそのセグメント外も探索できます。Amazon公式はAudience Signalsの追加料金はないと案内しています。AMCでの1Pシグナル分析は、AMC 1Pシグナル無料化ガイドを参照してください。
Audio for Brand+・Performance+は、音声広告の配信面そのものを解説する機能ではなく、Brand+・Performance+の最適化へ音声を組み込む更新です。音声素材、Amazon Music、Alexa、ポッドキャスト、Spotifyなどの詳細は、Amazon音声広告の解説とAmazon DSPでのSpotify広告へ役割を分けます。なお、7月告知はポッドキャストがBrand+・Performance+でまだ利用できないと注記しています。
日本で使える機能と注意点
日本は7月告知の対象地域に含まれますが、機能別の例外があります。次の表は「日本で必ず全アカウントへ表示される」という意味ではなく、公式の地域・利用者条件を整理したものです。
機能群 | 日本での公式案内 | 実施前に確認すること |
|---|---|---|
Audience Signals | 日本を含む地域一覧。Brand+ Prospecting、Performance+ Customer Acquisition / Unified Consideration | Ads Data Manager連携、オーディエンス作成権限、Open Betaアクセス |
Audio for Brand+ / Performance+ | 日本は3P supply only。Brand+はGA、Performance+はOpen Beta | 利用できる供給元、音声素材、コンパニオン画像、Performance+ Audioの条件 |
Automatic Deal Selection for Brand+ STV | 米国のみ | 日本では利用前提にしない |
Managed Service Proposal Builder | AMGマネージドサービス向け、担当者経由 | 契約形態と担当窓口 |
Brand Outcome / Prime Video Signal | 日本を含む地域一覧。対象Brand+広告主で自動有効化される条件あり | Reach goal、Prime Video Ads供給、Open Beta表示 |
Asynchronous Remarketing | 日本を含む地域一覧。Performance+ Remarketing / Retention | 対象施策、GA表示、既存イベント設計 |
Expanded App Conversion | MMP由来「Other」conversionを使う広告主 | MMP連携、イベント名、アプリ広告の測定設計 |
UIで機能が見えない場合は、地域一覧だけを根拠に利用可能と判断せず、Amazon Adsのアカウント担当者へ確認します。10機能はAmazon Adsのキャンペーン作成UIで提供されますが、API対応は別途技術文書で案内されるとされています。
1Pデータ・音声・Prime Videoをどう使い分けるか
10機能を個別に追うより、課題から逆算すると選択しやすくなります。
1P顧客データを持ち、獲得学習を早めたい場合はAudience Signalsを検討します。Ads Data Managerへハッシュ化した顧客リストを接続するか、AMCで作成したカスタムオーディエンスを用意します。オーディエンスは配信対象の固定ではなく、AIが価値の高いユーザーを見つけるためのシグナルです。
画面を見ていない時間へ接点を広げたい場合はAudioを検討します。日本では3P供給のみという条件があるため、在庫、尺、コンパニオンクリエイティブ、計測指標を先に確認します。Performance+ Audioでは少なくとも1つの3P在庫ソースが必要で、保証付きディールは利用できないと公式に記載されています。
Prime Videoでブランド関連性を高めたい場合は、Brand+のPrime Video Signal Integrationを確認します。これはPrime Videoの視聴行動をBrand+のランキングへ加える機能であり、会話型AIエージェントとは別です。Amazon AdsのAIエージェント機能は、広告主向けAIエージェントの解説で扱っています。
導入前の5ステップ
1. Brand+かPerformance+かを目的で分ける
認知・リーチ・ブランド関連行動ならBrand+、獲得・再来訪・維持・コンバージョンならPerformance+を起点にします。両方を使う場合もキャンペーンごとの役割を分けます。
2. KPIとコンバージョンソースを固定する
Brand+ではリーチ、動画視聴、ブランド関連行動などを選びます。Performance+ではAmazon ASINの売上か、自社サイト・アプリのイベントかを決めます。自社サイト・アプリではAmazon Attribution Tag、Conversion API、MMPなどの連携が必要です。
3. 1Pシグナルと除外を準備する
Audience Signalsを使う場合はAds Data ManagerまたはAMCのオーディエンスを準備します。既存購入者を除外するのか、Retentionで再接触するのかを同時に決めます。Audience SignalsとAudience exclusionsは独立して機能します。
4. 日本アカウントで利用可否を確認する
GA・Open Beta、供給元、広告主種別、契約形態、UI表示を確認します。特にAudio、STV自動ディール、Managed Service、MMPコンバージョンは条件差が大きいため、担当者または管理画面の表示を最終判断にします。
5. 学習期間とreadbackを先に決める
Performance+の公式ガイドは、新規キャンペーンが学習・最適化に最大4週間かかる場合があると案内しています。短期間の結果だけで停止・拡大せず、7日・14日・30日などのreadback時点、目標、停止条件を先に固定します。