Spotifyは2026年7月9日、Spotify Ad ExchangeとAmazon DSPの直接連携を強化し、日本を新たな対象市場に加えたと発表しました。Amazon DSPを利用する広告主は、Spotifyの音楽・ポッドキャストにおける音声広告や動画広告を、プログラマティックに買い付けられるようになります。
今回のポイントは、Amazon DSPで扱うディスプレイ、動画、ストリーミングTVなどの施策に「音声」を加え、同じ運用基盤でリーチやフリークエンシーを考えられることです。本記事では、日本の広告主にとっての変更点とEC事業者・メーカーの活用方法を解説します。
Amazon DSPとSpotifyの連携で何が変わったのか
Amazon AdsとSpotifyは2025年10月、Amazon DSPからSpotifyのストリーミング音声・動画広告在庫へアクセスできるグローバルな提携を発表しました。当初の対象は米国、英国、カナダ、ドイツ、フランスなど9市場で、日本は含まれていませんでした。
2026年7月のアップデートでは、日本とオーストラリアが音声・動画広告の対象市場に追加されました。さらに、Amazon DSPとSpotify Ad Exchangeの直接接続が強化され、Spotify上のポッドキャスト音声広告もAmazon DSPから買い付けられるようになっています。
直接接続には、中間経路を減らしてサプライパスの透明性や効率を高める狙いがあります。広告主はSpotifyをAmazon DSP上のオムニチャネル施策へ組み込みやすくなります。
日本で利用できるSpotify広告在庫と配信形式
Spotifyの公式発表では、日本の広告主がAmazon DSP経由で利用できる対象として、音声広告と動画広告が明記されています。また、Spotify Ad Exchange経由でポッドキャスト番組へ音声広告を配信できます。
Amazon Ads側の2026年7月6日付発表では、日本はオープンインターネットのポッドキャストおよびストリーミング音声広告の提供地域に含まれています。利用対象はAmazon DSPのセルフサービス広告主とされています。
ただし、全在庫が日本の全アカウントに同一条件で表示されるとは限りません。クリエイティブ仕様、ターゲティング、審査要件、最低出稿額やCPMは、Amazon DSPの契約形態や取引方式に応じて確認が必要です。
Amazonの購買シグナルとSpotify広告を組み合わせるメリット
Amazon DSPの特徴は、Amazon内外の広告在庫を横断して配信できることに加え、Amazonが保有するショッピング、ストリーミング、閲覧などのシグナルを広告施策に活用できる点です。Spotifyとの連携により、こうしたオーディエンス設計と音声・動画の広告接点を同じDSP上で組み合わせられるようになります。
商品カテゴリーへの関心が想定される層へ、通勤、運動、家事、ポッドキャスト視聴などの「耳が空いている時間」にブランドメッセージを届ける設計が考えられます。ストリーミングTVやディスプレイ広告と配信計画、フリークエンシー、レポーティングをまとめやすい点もメリットです。ただし、実際に選択できるオーディエンスや計測項目は管理画面と契約条件に基づきます。
PMP・PG・オープンオークションの違い
今回の連携では、目的に応じて複数の買い付け方式を選択できます。
- PMP(プライベートマーケットプレイス):限定された広告主が、合意した条件のもとで特定の広告在庫を買い付ける方式です。音楽・ポッドキャストの音声・動画在庫が対象として示されています。
- PG(Programmatic Guaranteed):固定CPMなどの条件で広告在庫を予約・保証する方式です。Spotifyのファーストパーティカスタムオーディエンスを用いた、音楽在庫の音声・動画広告に対応すると説明されています。
- オープンオークション:入札によって広告在庫を買い付ける方式です。Spotify公式では、音楽在庫の動画広告が対象として挙げられています。
常時配信、繁忙期の在庫確保など、目的によって適した方式は異なります。Deal IDや最低出稿条件はAmazon DSPの担当者や運用パートナーへ確認してください。
EC・メーカーが検討できる活用シナリオ
EC事業者やメーカーにとって、最もわかりやすい活用方法は、既存の動画・ディスプレイ施策へ音声広告を追加し、接触機会を広げることです。
新商品の発売時には、ストリーミングTVや動画で商品の世界観を見せ、Spotifyの音声広告で商品名や特徴を伝える設計が考えられます。ポッドキャスト広告は商品背景やブランドストーリーとも相性が期待できます。クリックだけでなく、リーチ、広告接触後の検索、商品詳細ページ訪問、ブランド指標、購買への寄与など、目的に合った評価設計が重要です。
Spotifyが紹介した英国Arla Foodsの事例では、Amazon DSPを通じてストリーミングTVとプログラマティックオーディオを組み合わせた結果、Prime Video単体と比較して54%のインクリメンタルリーチを得たとされています。ただし、これは英国の特定キャンペーンの結果であり、日本市場や別商材で同じ成果を保証するものではありません。
導入前に確認したい計測・クリエイティブ・運用上の注意点
導入前に「誰に、どの場面で、何を覚えてもらうか」を整理しましょう。音声広告では、冒頭でブランド名や商品カテゴリーを伝え、画面を見なくても内容が理解できる構成が必要です。
計測面では、キャンペーン開始前に主要KPIと比較方法を決めておくことが重要です。認知拡大が目的ならユニークリーチやフリークエンシー、検討促進ならブランド検索や商品詳細ページ訪問、販売寄与を重視するならAmazon DSPで利用可能なコンバージョン指標などを候補にします。
Spotify追加による純増リーチを確認できるよう、可能であれば地域・期間・オーディエンスを分けて音声追加前後を比較してください。
Amazon DSPとSpotifyの連携は、リテールメディアをAmazonのサイト内広告だけで捉えるのではなく、動画や音声を含む生活者のメディア接点全体へ広げる動きの一つです。まずは利用可能な在庫と計測条件を確認し、既存施策に対する「追加リーチ」を検証するところから始めるとよいでしょう。
出典・参考文献
- Spotify Japan「Spotify、Amazon DSPへのポッドキャスト広告在庫拡充を発表。Spotify Ad Exchangeとの直接統合を強化」(2026年7月9日)
- Spotify Advertising「Spotify Ad Exchange is now directly integrated with Amazon DSP」
- Amazon Ads「Amazon DSP expands omnichannel capabilities with new open internet podcast and streaming audio inventory at scale」(2026年7月6日)
- Amazon Ads「Amazon Ads and Spotify announce global programmatic partnership through Amazon DSP」(2025年10月1日)
※本記事は2026年7月14日時点の公式情報に基づいています。提供機能、在庫、料金、計測条件は変更される可能性があります。