2026年4月改定の全体像──「値上げ」と「値下げ」が同時に来た
2026年4月、Amazon日本のFBA手数料に大きな変化が訪れました。今回の改定が例年と異なるのは、コスト増とコスト減が同時に発生する「ダブル改定」である点です。
具体的には、4月1日から「販売手数料の+0.4%引き上げ」と「FBA配送代行手数料の平均38円引き下げ」が同日施行。さらに4月15日からは「長期在庫追加手数料(月額20円/点)」が新設されました(Amazon公式)。
つまり、売上に対するパーセンテージ課金は増え、物流の固定費は減り、在庫管理の甘さにはペナルティが課されるという三方向の変化です。「全体として得なのか損なのか」は、商品単価・販売数量・在庫回転率によって大きく異なります。
結論を先にお伝えすると、標準サイズの商品を月間数百個以上販売している販売事業者にとっては、配送手数料の引き下げ額が販売手数料の増加を上回り、ネットでコスト改善になるケースが多いと考えられます。
コスト増:販売手数料 全カテゴリー +0.4% の影響度
2026年4月1日より、商品1点あたりの売上合計が750円を超える場合、すべての手数料カテゴリーで販売手数料率が0.4%引き上げられました(Amazon公式)。
注意すべきは例外カテゴリーの存在です。「メディア(本・DVD・ミュージック・PCソフト・ビデオ)」「Amazonデバイス用アクセサリ」「TVゲーム&ゲーム用アクセサリ」の3カテゴリーについては、売上金額にかかわらず全商品が+0.4%の対象となります。
実際の金額インパクトを見てみましょう。たとえばホーム&キッチンカテゴリーの場合、改定後の販売手数料率は15.4%です。販売価格1,000円の商品では、従来の15.0%で150円だった手数料が154円に。1個あたり4円の増加は一見小さく見えますが、月1,000個販売する商品なら月4,000円、年間48,000円のコスト増になります。
販売価格3,000円の商品なら1個あたり12円増(月12,000円、年144,000円)、5,000円なら1個あたり20円増(月20,000円、年240,000円)と、単価が高いほど絶対額の影響が大きくなるのがパーセンテージ課金の特徴です。
コスト増:長期在庫追加手数料(月額20円/点)の新設
2026年4月15日より、FBA倉庫での保管期間が365日を超えるすべての商品に対して、1点あたり月額20円の「長期在庫追加手数料」が新設されました(Amazon公式)。
従来からAmazonには長期在庫手数料の仕組みがありましたが、今回は「最低月額20円」という下限が設定された点が新しいポイントです。小型・軽量で体積あたりの保管料が低かった商品にも、一律で1点20円が課されることになります。
たとえば、FBA倉庫に365日超の滞留在庫が500点ある場合、月額10,000円、年間120,000円の追加コストが発生します。
この手数料はAmazonからの明確なメッセージです。「倉庫を長期保管の場所として使わないでほしい」ということです。対策としては以下が有効です。
- 在庫回転率のモニタリング強化: 保管日数が300日を超えた商品を週次でチェック
- セール活用による滞留解消: タイムセールやクーポン施策で365日到達前に動かす
- FBA在庫補充の最適化: 少量頻回の補充に切り替え、過剰在庫を抑制する
コスト減:FBA配送代行手数料 平均38円引き下げの恩恵
今回の改定で最も大きなインパクトをもたらすのが、標準サイズ(20〜80cm・最大5kg)のFBA配送代行手数料の平均38円引き下げです(4月1日適用、Amazon公式)。
主なサイズ区分の引き下げ額は以下のとおりです。
サイズ区分 | 条件 | 引き下げ額 |
|---|---|---|
標準2b | 30cm以下・2kg以下 | ▲19円 |
標準2c | 40cm以下・2kg以下 | ▲35円 |
平均(標準サイズ全体) | 20〜80cm・最大5kg | ▲38円 |
この引き下げは1個あたりの固定額削減であるため、販売数量が多いほど恩恵が大きくなります。月1,000個出荷する販売事業者が標準2c区分の商品を扱っている場合、月35,000円、年間420,000円のコスト削減です。
損益シミュレーション──あなたの商品はプラスかマイナスか
「コスト増」と「コスト減」を統合して、具体的な価格帯ごとのシミュレーションを行います。
前提条件: ホーム&キッチン(手数料率 15.0%→15.4%)/ 標準2c(配送手数料▲35円)/ 月1,000個 / 長期在庫なし
項目 | 販売価格 1,000円 | 販売価格 3,000円 | 販売価格 5,000円 |
|---|---|---|---|
販売手数料増(+0.4%/個) | +4円 | +12円 | +20円 |
配送手数料減(▲35円/個) | ▲35円 | ▲35円 | ▲35円 |
1個あたり差引 | ▲31円(改善) | ▲23円(改善) | ▲15円(改善) |
月間影響(×1,000個) | ▲31,000円 | ▲23,000円 | ▲15,000円 |
年間影響 | ▲372,000円 | ▲276,000円 | ▲180,000円 |
いずれの価格帯でも、配送手数料の引き下げが販売手数料の引き上げを上回り、ネットでコスト改善となりました。
ただし、以下のケースでは注意が必要です。
- 大型サイズ商品: 配送手数料引き下げの対象外。販売手数料+0.4%が純粋なコスト増
- メディア・TVゲーム系: 750円以下でも販売手数料が上がる
- 在庫回転率が低い商品: 長期在庫追加手数料(月20円/点)でコスト改善を打ち消す可能性
損益分岐点: 配送手数料引き下げ35円に対し、販売手数料+0.4%が35円に達する売上は約8,750円。販売価格がこれを超える標準2c商品は、配送手数料の恩恵だけでは吸収できません。
浮いたコストを競争力に変える──広告再投資戦略のすすめ
ダブル改定でコスト改善が見込める販売事業者さまにとって、次に考えるべきは「浮いたコストをどう使うか」です。GoalTechではAmazon広告(スポンサー広告・DSPなど)への再投資を推奨しています。
1. 競合がコスト対応に追われる「空白期間」を突く
手数料改定の直後は、多くの販売事業者さまが価格改定・在庫整理・利益計算に追われます。この時期にディスプレイ広告やビデオ広告を強化すれば、通常より低いCPMで露出を獲得できる可能性があります。
2. 検索順位の「複利効果」を得る
広告経由の売上増加は、Amazonのアルゴリズム上でオーガニック検索順位の向上にも寄与します。今期の広告投資が来期の自然検索流入を増やし、広告費を段階的に抑えながら売上を維持する好循環を作れます。
3. 配送コスト削減は「継続的な原資」になる
配送手数料の削減は出荷する限り毎月発生する固定的な改善です。この安定した原資を広告予算に充てることで、月次の広告ROIを安定的に管理できます。
たとえば、月23,000円のコスト改善が見込める3,000円商品の販売事業者さまであれば、その全額を広告に充てて月間インプレッション数を10〜15万回増やすことが可能です。
重要なのは、手数料改定を「受け身のコスト変動」として捉えるのではなく、「競争環境が変わるタイミングでポジションを取り直す機会」として活用することです。
出典・参考文献
1. 2026年販売手数料およびFBA手数料改定(公式) — Amazon Seller Central
2. 長期在庫追加手数料(公式) — Amazon Seller Central
3. 2026年販売手数料改定(公式) — Amazon Seller Central
4. 2026年FBA配送代行手数料改定(公式) — Amazon Seller Central