Amazon広告を運用していると、数字の良し悪しを判断しにくい場面があります。

CTRが0.4%台でも高いのか低いのか。CPCが上がっている時に、競争環境の変化なのか、自社の入札設計の問題なのか。新規顧客を取りにいく施策で、NTB率をどこまで期待してよいのか。自社アカウントの過去比較だけでは、答えを出しにくい指標が多くあります。

この時に使いたいのが、Amazon AdsのBenchmarksレポートです。Amazon Adsは2026年5月18日、Benchmarks reportingを日本を含む対応マーケットプレイスで一般提供したと発表しました。これにより、広告主は自社の広告成果を、同じカテゴリの類似ブランド群と比較しやすくなっています。

この記事では、Amazon Ads Benchmarksレポートを、単なる「平均値を見る機能」ではなく、週次改善と予算判断に使うための見方として整理します。ここでいう「カテゴリ平均」は、平均値ひとつだけを見るという意味ではありません。Benchmarksでは中央値やP25/P50/P75などの四分位も使い、自社指標がカテゴリ内でどの位置にあるかを読むことが重要です。基本指標の意味は Amazon広告の指標の読み方ガイド を、通常レポートの異常値確認は Amazon広告レポートの読み方 も合わせて確認してください。

Amazon Ads Benchmarksレポートとは

Amazon Ads Benchmarksレポートは、自社ブランドの広告パフォーマンスを、同じカテゴリ内の類似ブランド群と比較するためのレポートです。Amazon Ads公式ヘルプでは、Benchmark reportingは、ブランドの広告成果をカテゴリ内の類似ブランドと比較する機能として説明されています。

従来のAmazon広告レポートでは、自社の表示回数、クリック、CPC、売上、ACOS、ROASなどを確認できます。ただし、それだけでは「この数字が市場の中で強いのか弱いのか」は分かりません。

Benchmarksレポートでは、次のような問いに答えやすくなります。

判断したいこと

Benchmarksで見る観点

CTRは高いのか低いのか

同カテゴリ・同広告プロダクトのCTR中央値や四分位

CPCは高すぎるのか

Peer benchmarkに対するCPCの位置

動画広告は見られているのか

Completion rateやCost per completed view

新規顧客獲得に効いているのか

Percent of purchases new to brand、Purchase rate new to brand

予算を増やしてよいか

自社指標がカテゴリ基準に対して上回っているか、下回っているか

重要なのは、Benchmarksを「競合の具体名を見るレポート」と誤解しないことです。Amazon Ads公式ヘルプでは、広告主のプライバシーを守るため、Peer groupには最低5ブランドが必要で、完全な競合リストは開示されないと説明されています。個別競合の特定ではなく、カテゴリ単位の比較基準を提供するものと考えるとよいでしょう。

対象市場と利用条件

Amazon Adsの2026年5月18日の発表では、Benchmarks reportingは米国、カナダ、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、日本、インド、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、オランダ、トルコ、スウェーデン、サウジアラビア、UAE、エジプトで利用可能とされています。

利用対象は、Brand Registryに登録されたブランド所有者または代理人です。Amazon Ads公式ヘルプでも、Brand Registry登録、アクティブキャンペーン、最低支出条件、対象期間、広告プロダクトごとの対応指標などが、表示可否に関係すると説明されています。

つまり、日本の広告主でも対象に含まれますが、すべてのアカウント・すべてのキャンペーンで常に表示されるわけではありません。Benchmarksが出ない場合は、まず次を確認します。

確認項目

見る理由

Brand Registry登録

ブランド所有者または代理人である必要がある

アクティブキャンペーン

対象期間に広告活動がないと自社指標が出にくい

最低支出条件

支出が少ないとBenchmark対象にならない場合がある

Peer brand数

類似ブランドが最低5ブランド必要

キャンペーン範囲

複数ブランドを広く対象にしたキャンペーンは対象外になる場合がある

指標と広告プロダクト

すべての指標が全広告プロダクトで見られるわけではない

Benchmarksが表示されない時に「機能が使えない」と決めつける前に、対象期間、ブランド、カテゴリ、広告プロダクト、キャンペーンの粒度を確認します。

見られる主な指標

Amazon Ads公式発表とAPIドキュメントでは、Benchmarksで利用できる指標として、次の8系統が挙げられています。

指標

何を見るか

実務での使い方

Percent of purchases new to brand

購入のうち新規顧客が占める割合

新規獲得施策として効いているか

Purchase rate new to brand

インプレッションに対する新規顧客購入率

認知・検討から新規購入へ進んでいるか

Cost per purchase new to brand

新規顧客購入1件あたりの費用

新規獲得単価が許容範囲か

CTR

表示に対してクリックされた割合

広告クリエイティブやターゲティングの反応

CPC

クリック1回あたりの費用

入札競争や予算効率

Completion rate video

動画開始に対する完了率

動画広告の視聴維持

Cost per completed view

動画完了1回あたりの費用

動画視聴単価

CPM

1,000インプレッションあたりの費用

認知施策や表示単価

通常の週次レポートでは、ACOSやROASに目が行きがちです。しかしBenchmarksでは、ACOSだけでは見えない「クリック前の弱さ」「動画視聴の弱さ」「新規顧客獲得の弱さ」を相対比較できます。

たとえば、ACOSが悪く見えるキャンペーンでも、CTRがPeer benchmarkを上回り、NTB率も高いなら、新規獲得目的としては意味があるかもしれません。逆に、ROASは悪くないが、CTRやNTB率がPeer benchmarkを下回るなら、既存需要を刈り取っているだけで、拡張余地は限定的かもしれません。

CTR・CPCをカテゴリ平均でどう読むか

Amazon広告のCTRとCPCは、カテゴリによって大きく変わります。低価格で比較頻度が高い商品、指名買いが多いブランド、レビュー差が大きいカテゴリ、動画やDSP中心の施策では、同じCTRでも意味が変わります。

Benchmarksを見る時は、次のように分けます。

状態

判断

次の打ち手

CTRがPeer benchmarkより低い

表示はされているが反応が弱い

検索語句、商品画像、見出し、クリエイティブを確認

CTRは高いがCPCも高い

反応はあるが競争が強い

CVR、ROAS、利益率で入札継続可否を判断

CTRは高くCPCはPeer並み

広告面では優位

予算増、掲載面拡大、関連語句展開を検討

CTRもCPCも低い

低競争だが需要も弱い可能性

表示量、検索ボリューム、商品選定を確認

CPCがPeerより高いがCVRも高い

高いクリックを回収できている可能性

利益が合うなら維持、合わなければ入札を分ける

CTRが低い時に、すぐ入札を下げる必要はありません。まず、検索語句と広告内容が一致しているかを見ます。Sponsored BrandsのCTR改善は スポンサーブランド広告のCTR改善チェックリスト でも扱っています。

一方、CPCが高い時は、単純に「高すぎる」と見るのではなく、カテゴリベンチマークとの差分と利益率を合わせて見ます。Peer benchmarkより高いCPCでも、CVRと平均注文額が高ければ成立する場合があります。逆に、Peer benchmark並みのCPCでも、商品粗利が薄ければ赤字になります。

NTB系指標は新規獲得の質を見る

NTBはNew-to-brand、つまり過去一定期間にそのブランドの商品を購入していなかった新規顧客を指す指標です。Amazon Ads公式ヘルプでは、Percent of purchases new to brandは、過去12か月にそのブランドの商品を購入していなかった買い物客による購入割合として説明されています。

NTB系指標を見る時は、ROASとは別の問いを立てます。

指標

問い

Percent of purchases new to brand

購入者のうち、新規顧客はどれくらいか

Purchase rate new to brand

表示から新規購入へ進む効率はどうか

Cost per purchase new to brand

新規顧客1人を獲得する費用は許容できるか

特にSponsored Brands、Sponsored Display、Amazon DSP、Streaming TVのような上流ファネルに近い施策では、短期ROASだけで評価すると役割を見誤ります。新規獲得目的なら、NTB率や新規顧客獲得単価を、カテゴリ基準と照らして見る必要があります。

たとえば、ROASが既存のSponsored Productsより低くても、NTB率がカテゴリ中央値を大きく上回っているなら、ブランド拡張施策として残す判断があります。逆に、ROASは高いがNTB率が低いなら、既存顧客や指名需要への依存が強く、新規開拓にはなっていない可能性があります。

この論点は、Amazon DSPやAMCの分析ともつながります。広告接触後の新規顧客、重複接触、LTVを深掘りしたい場合は AMCでできる分析ユースケース10選 も合わせて確認してください。

動画広告とDSPではCPM・動画完了率も見る

BenchmarksはSponsored Productsだけのためのレポートではありません。Amazon Adsの発表では、Amazon DSP、Sponsored Products、Sponsored Brands、Sponsored Display、Sponsored TVキャンペーンにまたがって利用できると説明されています。

特にPrime Video Ads、Streaming TV、DSPを使う場合は、CTRやCPCだけで判断しない方が安全です。動画広告では、クリックよりも視聴完了、リーチ、CPM、Cost per completed viewを見る場面があります。

施策

見る指標

判断

Sponsored Products

CTR、CPC、CVR、ROAS

検索意図と商品訴求が合っているか

Sponsored Brands

CTR、CPC、Store遷移、NTB

ブランド接触と比較検討を作れているか

Sponsored Display

CTR、CPC、CPM、NTB

リマーケティングや検討層接触が効いているか

Amazon DSP

CPM、CTR、NTB、動画指標

上流接触から新規獲得へつながっているか

Sponsored TV / Streaming TV

CPM、動画完了率、Cost per completed view

認知接触として適切な単価で見られているか

GoalTechの既存記事では、PVA、CTV、DSPの違いを Amazon Prime Video Ads・Amazon DSP・CTV広告の違い で整理しています。Benchmarksレポートは、この違いを理解したうえで、各広告プロダクトの評価基準を分けるために使うと実務に落とし込みやすくなります。

週次レビューへの組み込み方

Benchmarksレポートは、毎日細かく見て一喜一憂するよりも、週次レビューや月次レビューに組み込む方が使いやすいです。Amazon AdsのAPIドキュメントでは、Benchmarks reportsは日次、週次、月次で取得できると説明されています。Campaign Managerの詳細ビューでも、日次、週次、月次、四半期の表示やダウンロードが案内されています。

週次レビューでは、次の順番にすると判断しやすくなります。

Step

見るもの

判断

1

自社の通常レポート

費用、売上、CTR、CPC、ROAS、NTBの変化を確認

2

Benchmarks

自社指標がPeer benchmarkに対して強いか弱いか

3

弱い指標を分類

クリック前、クリック後、入札、動画視聴、新規獲得に分ける

4

打ち手を決める

入札、商品、検索語句、クリエイティブ、予算を分けて調整

5

次週の検証条件

変える変数と成功ラインを決める

たとえば、週次レビューで次のように判断します。

Benchmarks上の状態

次のアクション

CTRがP25未満

検索語句、広告見出し、商品画像、商品選定を見直す

CTRはP50以上、CPCがP75超

入札を下げる前にCVRと利益率を確認する

NTB率がP25未満

指名・既存顧客寄りの配信になっていないか確認する

動画完了率がP25未満

冒頭、尺、訴求、音なし視聴への対応を見直す

CPMが高く、動画完了率も低い

配信面、オーディエンス、クリエイティブを切り分ける

ここで大事なのは、Benchmarksを「赤か青か」で終わらせないことです。低い指標を見つけたら、その指標がクリック前の問題なのか、クリック後の問題なのか、配信面の問題なのか、新規獲得の問題なのかに分解します。

週次運用の全体像は Amazon広告の週次改善チェックリスト と合わせると、通常レポートとBenchmarksをつなげやすくなります。

APIやダウンロードで見る場合の注意点

Amazon Ads公式発表では、Benchmarks reportsはReporting APIで、Sponsored Ads向けの crossProgramBenchmarks とAmazon DSP向けの dspBenchmarks として利用できると説明されています。APIドキュメントでは、brandCategoryBenchmarks をgroupByにし、CTR、CPC、CPM、NTB系指標、動画指標のP25/P50/P75を取得できる形が示されています。

レポートをダッシュボード化する場合は、次の項目を一緒に持つと分析しやすくなります。

カラム

使い方

campaignCountry

国ごとの基準差を見る

brand

複数ブランド運用時に分ける

browseCategory

カテゴリ別の基準差を見る

adProduct

SP、SB、SD、DSPなどを分ける

adFormat

display、video、audioなどを分ける

campaignGoal

awareness、consideration、conversionなど目的別に見る

peerSetSize

比較対象の厚みを見る

P25 / P50 / P75

下位、中央値、上位水準との距離を見る

特に複数国を運用しているブランドでは、日本、米国、英国、ドイツなどを同じ絶対値で比較しない方が安全です。同じカテゴリでも、CPC、CTR、動画視聴、NTB率は国や広告在庫によって変わります。国ごとにPeer benchmarkを見たうえで、予算配分や改善優先度を決めます。

まとめ

Amazon Ads Benchmarksレポートは、Amazon広告の数字を「自社の過去比較」だけでなく「カテゴリ内の相対評価」で見るための機能です。CTR、CPC、CPM、動画完了率、NTB系指標を、国、カテゴリ、広告プロダクト、広告フォーマット、キャンペーン目的ごとに比較できるため、週次レビューの判断精度を上げやすくなります。

ただし、Benchmarksは自動で答えを出すものではありません。CTRが低いなら検索語句やクリエイティブ、CPCが高いなら利益率とCVR、NTB率が低いなら配信目的とオーディエンス、動画完了率が低いならクリエイティブと配信面を確認します。

Amazon広告の改善では、ACOSやROASだけを見て調整すると、認知施策や新規獲得施策の価値を見落とすことがあります。Benchmarksを使うことで、広告プロダクトごとに「今の数字はカテゴリ内で強いのか」「次に直すべき弱点はどこか」を判断しやすくなります。

GoalTechでは、Sponsored Products、Sponsored Brands、Sponsored Display、Amazon DSP、PVAを、通常レポート、Benchmarks、AMC分析までつなげて設計します。Amazon広告の数字を見ても次の打ち手が決まらない場合は、週次レポートとBenchmarksを合わせた運用診断としてご相談ください。

Amazon広告の週次診断やBenchmarksを含めた改善設計を相談したい方は、GoalTechのお問い合わせフォーム からご相談ください。

出典・参考文献