Amazon Marketing Cloud(AMC)を検討するとき、最初に迷いやすいのは「結局、何を分析できるのか」です。Amazon Adsの標準レポートだけでも、インプレッション、クリック、広告費、CV、ACOS/ROASは確認できます。しかし、DSP、CTV、Prime Video Ads、Sponsored Ads、Brand Store、購買データ、CRMデータをまたいで「誰に、どの順番で、何回届き、その後に何が起きたか」まで見るには、通常レポートだけでは足りません。

Amazon Ads公式では、AMCをAmazon Adsシグナルや広告主の入力情報など、仮名化されたシグナルをプライバシーが保護された環境で分析し、オーディエンスを構築できるクラウドベースのクリーンルームとして説明しています。つまりAMCは、広告レポートを置き換えるツールではなく、標準レポートで見えない接触順、重複、頻度、NTB、LTV、オーディエンス化を深掘りするための分析環境です。

既存記事の Amazon Marketing Cloud(AMC)入門 ではAMCの基本を整理しています。本記事ではその次のステップとして、EC事業者が「DSP、CTV、Prime Video Ads、Sponsored Ads、NTB、LTV、Brand Storeをどう見るか」に絞り、AMCで実務に落とし込みやすい分析ユースケースを10個に分けて整理します。2026年6月22日時点のAmazon Ads公式情報を前提に、提供地域・契約・権限によって使えるデータが変わる点も明記します。

AMCでできることは3種類の問いに分ける

AMCでできることは広く見えますが、実務では大きく3種類に分けると整理しやすくなります。

問い

代表的な分析

使う判断

誰に届いたか

新規顧客、既存顧客、高LTV層、未購入層、Brand Store訪問者

配信対象と予算配分を変える

どう効いたか

接触順、重複接触、頻度、CTV/Prime Video接触後の購買

DSP/CTV/Sponsored Adsの役割を分ける

次に何をするか

リマーケティング、除外、類似拡張、入札調整

オーディエンスを作って施策へ戻す

Amazon Ads公式のAMCページでは、AMCで生成したカスタムインサイトやオーディエンスを、キャンペーン施策の最適化、マーケティング実行、ビジネス意思決定に使えると説明されています。つまり、AMCは「分析して終わり」ではなく、次の広告設計へ戻すための環境です。

AMC分析ユースケース10選

以下は、EC事業者が検討しやすいAMC分析ユースケースです。すべてを同時に始める必要はありません。まずは、商材と広告課題に近いものを1〜3個選びます。

1. DSP・Sponsored Adsの接触順を見る

Sponsored Products、Sponsored Brands、Sponsored Display、Amazon DSPのどの順番で接触したユーザーが購入・再訪・資料DLに進んでいるかを見ます。通常レポートでは広告タイプごとの成果に分かれがちですが、AMCではユーザー単位のイベントを集計し、接触順のパターンとして整理できます。

たとえば「DSP接触後にSponsored Productsで購入した層」と「Sponsored Productsだけで購入した層」を比べれば、上流接触が新規獲得や購入単価にどう関係しているかを検討できます。ただし、AMCで見えるのは接触パターンであり、因果効果の断定ではありません。予算判断には、期間、キャンペーン目的、除外条件、比較群をそろえて見る必要があります。

2. CTV・Prime Video Ads接触後の行動を見る

CTVやPrime Video Adsは認知寄りに見られやすい一方で、EC事業者にとっては「その後に検索したか」「Brand Storeへ来たか」「Sponsored Adsで購入したか」まで見たい施策です。Amazon Adsは2025年11月、AMCでPrime Video viewership signalsをopen betaとして提供し、Prime Videoのコンテンツタイトル、コンテンツタイプ、番組レベルの情報を分析できると発表しています。提供地域には日本も含まれます。

これにより、単に動画広告の視聴完了率を見るだけでなく、Prime Video視聴傾向、DSP接触、Sponsored Ads接触、購買行動の重なりを把握しやすくなります。Prime Video Ads自体のKPI設計は Prime Video AdsのKPI設計ガイド、広告面の違いは Amazon Prime Video Ads・Amazon DSP・CTV広告の違い も参照してください。

3. 重複接触・頻度・サチュレーションを見る

広告費を増やしても成果が伸びないときは、ユーザー単位で同じ人に届きすぎていないか、逆に十分に届いていないかを見ます。AMCでは、DSP、Sponsored Ads、動画広告をまたいだ接触回数や接触組み合わせを集計し、成果が頭打ちになる頻度を探せます。

GoalTechの AMCサチュレーション分析ユースケース では、広告費をどこまで増やせるかという投資余地の見方を整理しています。フリークエンシーは「高ければ悪い」ではなく、商品単価、検討期間、広告目的によって適正値が変わります。重要なのは、接触頻度別のCV率、NTB率、購入単価、LTVを同じ表で比較することです。

4. NTB分析で新規顧客の入口を特定する

短期ROASだけを見ると、既存顧客や指名寄りのキャンペーンが強く見えがちです。NTB(New-to-Brand)分析では、新規顧客の比率、初回購入商品、初回接触広告、再購入までの流れを分けて見ます。

たとえば、Prime Video AdsやDSPが短期ROASでは弱く見えても、NTB比率や初回購入単価が高い場合は、上流投資として評価できる可能性があります。一方で、NTBは定義期間や対象商品がずれると解釈も変わるため、月次・四半期・キャンペーン期間のどれで判断するかを先に決める必要があります。

5. LTV分析で入口商品の価値を見直す

LTV分析では、初回購入後の再購入、カテゴリ横断、長期価値を見ます。Amazon Ads API Docsでは、Amazon Retail Purchases(ARP)について、最大5年(60か月)のAmazonストア購買データを含むAMC Paid Featuresのデータセットとして説明しています。2026年6月1日から12月31日まで、対象地域ではAmazon 1Pシグナルに含まれるデータを追加費用なしでクエリ可能とされていますが、利用には地域、資格、アカウント連携、機能提供状況の確認が必要です。

実務では、入口商品別に「初回ROAS」「NTB率」「2回目購入率」「90日/180日の購入額」を並べ、短期では低ROASに見える施策が長期では利益を作っていないかを確認します。FBA手数料や広告費の許容ラインは FBA手数料改定後の利益シミュレーション、広告費の考え方は Amazon広告の費用ガイド と合わせて見ると判断しやすくなります。

6. 高価値顧客の特徴から配信対象を作る

高LTV層や高単価購入者が、どの広告、どの商品、どのカテゴリ、どのBrand Storeページに接触していたかを見ます。AMCの価値は、単に平均ROASを見るのではなく「価値の高い顧客が何に反応していたか」を広告施策へ戻せる点にあります。

この分析では、サンプル数と集計しきい値に注意が必要です。AMCはプライバシー保護のため、集計・匿名化された出力を前提にしています。細かく切りすぎると十分な行数が出ないため、商品単品ではなくカテゴリ単位、1週間ではなく30日/90日単位で見るなど、実務で使える粒度へ調整します。

7. 未購入者リマーケティングを設計する

広告接触、Brand Store訪問、商品詳細閲覧、カート投入などの行動があるものの、購入に至っていない層を抽出し、DSPやSponsored Displayへ戻します。AMCは、分析結果からカスタムオーディエンスを作成し、スポンサー広告、動画広告、ディスプレイ広告のメディアバイイングへ活用できると説明されています。

未購入者リマーケティングでは、配信対象より先に除外条件を決めることが重要です。直近購入者、既存顧客、返品傾向が強い層、低関与の過剰接触層を除外しないと、短期クリックは増えても利益が悪化します。

8. クロスセル・アップセルの順番を見る

商品Aを購入した後に商品Bへ進む流れ、定期購入へ進む流れ、高単価SKUへ上がる流れを見ます。AMCでは、Amazon Store内の購買シグナルや広告接触を組み合わせ、初回購入商品とその後の購入行動を比較できます。

この分析は、広告だけでなく商品設計にも使えます。入口商品をROASだけで判断せず、後続購入を生む商品として評価できるかを見ることで、Sponsored Productsの入札、DSPのリマーケティング、セット販売、Brand Store導線を改善しやすくなります。

9. Brand Store訪問・滞在・流入元を見る

Amazon Brand Store Insightsは、Brand Storeのページ表示やインタラクションを表すAMCデータセットです。Amazon Ads API Docsでは、ページビュー、滞在時間、Store流入元、Store内のクリックなどを扱えるデータとして説明されています。Brand Storeを単なるブランド紹介ページではなく、広告接触後の中間CVとして見る場合に有効です。

たとえば、DSP接触後にBrand Storeへ来た人、Sponsored Brands経由でStoreに来た人、商品詳細ページのbylineから来た人を比較すれば、Storeが購買前の比較・教育・回遊にどれだけ効いているかを見られます。Storeを持っているブランドでは、商品詳細ページだけでなくBrand Storeのページ構成も広告改善の対象に入れるべきです。

10. ファーストパーティデータ連携とオーディエンス化

AMCでは、広告主が保有する仮名化された入力情報をAmazon Adsシグナルと組み合わせて分析できます。たとえば、CRM、会員ランク、購買頻度、資料DL、商談化などの自社側データと広告接触をつなぐことで、既存顧客の除外、休眠顧客の再活性、高LTV見込み層への拡張などを設計できます。

ただし、ここは最も設計ミスが出やすい領域です。アップロードするデータの同意、識別子、更新頻度、保持期間、利用目的、社内権限を先に整理します。AMCのプライバシー保護環境は強力ですが、広告主側のデータガバナンスが曖昧なまま進めると、分析結果を施策へ戻せません。

2026年に確認したいAMCシグナルと使いどころ

2026年時点では、AMCで扱えるシグナルの幅が広がっています。ただし、どのデータも「全広告主が即利用できる」と決めつけず、対象地域、資格、アカウント連携、Paid Features、契約形態を確認してから設計します。

シグナル/データ

見ること

実務での使いどころ

確認点

Amazon Ads標準シグナル

広告接触、クリック、コンバージョン

接触順、重複、頻度、広告タイプ別の役割整理

対象広告アカウント、期間、キャンペーン目的

Amazon Retail Purchases

最大60か月のAmazon Store購買データ

LTV、再購入、入口商品、クロスセル

販売アカウント連携、地域、資格、提供状況

Prime Video Insights

Prime Videoの視聴傾向やコンテンツ情報

CTV/Prime Video Adsの視聴文脈、到達、購買との関係

open beta、対象マーケット、AMCアクセス

Prime Video Channel Insights

Prime Video Channelの購読・ストリーミング

チャンネル運営者の獲得/継続/視聴分析

Prime Video Channels運営者であること

Brand Store Insights

Store訪問、滞在、インタラクション

Store導線、Sponsored Brands、DSP後の中間行動

Active Brand Storeの有無、対応地域

広告主の1Pデータ

CRM、会員、資料DL、商談、購買頻度

除外、リテンション、LTV見込み、商談化分析

同意、識別子、データ更新、権限

特に2026年は、Amazon 1Pシグナルの無料クエリ期間をどう使うかが重要です。追加費用なしで使える期間があっても、実際に使えるかはインスタンス、地域、資格、アカウント連携に依存します。まずは自社のAMC UIでPaid Featuresタブと利用可能テーブルを確認し、使えるデータから分析設計を作ります。

DSP・CTV・Sponsored Adsを横断して見る

通常の広告レポートでは、キャンペーン単位、広告タイプ単位で数字を見ることが多くなります。これだけでも運用改善はできますが、DSP、CTV、Sponsored Products、Sponsored Brands、Sponsored Displayを横断した接触順や重複は見えにくくなります。

たとえば、次のような問いです。

  • CTV接触者は、その後にSponsored Productsで購入しているか
  • DSPで接触した人とSponsored Brandsで接触した人は重複しているか
  • Sponsored Productsだけで購入した人と、動画接触後に購入した人でNTB比率は違うか
  • 何回以上接触するとCV効率が下がるか
  • Brand Store訪問は購入前の中間行動として機能しているか

Amazon DSPは、Amazon上の面だけでなく、Prime Video、Twitch、Fire TV、Amazon.com、第三者サイトやアプリなどに配信できるプログラマティック広告基盤です。既存記事の Amazon DSPとは? ではDSPの基本、Amazon DSP×CTV広告の記事 ではCTV文脈を整理しています。本記事では、各広告の役割が実際の接触順や購買行動としてどう出ているかをAMCで見る前提を扱います。

NTBとLTVは「短期CV」と分けて見る

AMCを使う価値が出やすいのは、短期CVだけでは判断しにくいテーマです。特にNTBとLTVは、通常レポートだけで判断すると見落としが出やすい領域です。

指標

短期で見ること

長期で見ること

CV

初回購入、資料DL、問い合わせ

再購入、商談化、継続購入

NTB

新規顧客の獲得数・比率

新規顧客がどの商品から入り、どのカテゴリへ広がるか

LTV

初回購入単価

複数カテゴリ購入、再購入、長期価値

投資判断

ACOS / ROAS

新規獲得単価、将来価値、入口商品の評価

短期ROASが低いキャンペーンをすぐ止めるのではなく、NTB率や後続購入まで見て判断します。逆に、短期ROASが高くても既存顧客への過剰接触が多い場合は、除外や上限設定で広告費を回収できる可能性があります。

分析結果をオーディエンスへ戻す

AMCは、分析結果を次の配信に戻せる点も重要です。Amazon Ads公式では、AMCで作成したオーディエンスを、スポンサー広告、動画広告、ディスプレイ広告のメディアバイイングに直接有効化できると説明されています。

戻し方

目的

リマーケティング

CTV接触後、商品詳細やBrand Storeを見たが未購入の層

検討中ユーザーを回収する

除外

直近購入済み、既存顧客、過剰接触層

無駄な接触を減らす

類似・拡張

高LTV顧客に近い層、NTB化しやすい層

新規獲得の質を上げる

入札調整

高価値層に近い検索・商品ターゲティングを強める

Sponsored Products/Brandsの投資効率を上げる

ただし、配信へ戻す前に「どの施策で使うか」を決める必要があります。DSPで使うのか、Sponsored Displayで使うのか、Sponsored ProductsやSponsored Brandsの入札調整で使うのかによって、設計するオーディエンスは変わります。

最初の30日で作るべき分析設計

AMCを始めるときは、SQLやテンプレートから入るよりも、先に問いを絞ります。最初の30日は、以下の順で進めると実務に落ちやすくなります。

期間

決めること

成果物

Day 1-3

目的を1つに絞る

例:CTV接触後の購買を見る、NTB率を比較する、LTV入口商品を見つける

Day 4-7

対象広告・期間・比較軸を決める

キャンペーン一覧、対象期間、接触あり/なし、NTB/既存の定義

Day 8-14

利用可能テーブルと権限を確認する

AMC標準シグナル、Paid Features、1Pデータ、Brand Store/Prime Videoデータの確認表

Day 15-21

最初のクエリと集計表を作る

接触順、頻度、NTB、LTV、Brand Store訪問の初回集計

Day 22-30

施策へ戻す

除外リスト、リマーケティング案、予算再配分案、週次改善メモ

AMCのテンプレートやAI支援は便利です。Amazon Ads公式でも、Ads Agentや自然言語による支援、AMC API、Reporting APIs、Audience management APIsが紹介されています。ただし、ツールが簡単になっても、問いが曖昧なままだと分析結果は使いにくくなります。AMCでできることを広く並べるより、最初に知りたい問いを決める方が成果につながります。

GoalTechでよく使う入口

GoalTechでは、AMCを「高度な分析ツール」として単独で扱うのではなく、Amazon広告運用、DSP/CTV、Prime Video Ads、LP、GA4、HubSpot、週次KPIとつなげて使います。

  1. DSP・CTVの効果測定:動画接触後の購買、検索、Brand Store、LP導線を確認する
  2. NTB・LTVの投資判断:短期ROASだけで止めず、新規顧客と長期価値を見る
  3. Brand Store改善:Store訪問、滞在、流入元、ページ別回遊を広告施策とつなげる
  4. オーディエンス活用:分析結果をDSPやSponsored Adsへ戻して配信精度を上げる

運用代行の体制やレポート設計は Amazon広告運用代行・代理店の選び方、AMCの1PシグナルやPaid Featuresの整理は AMC 1Pシグナルの記事 も確認してください。

まとめ

AMCで見るべきなのは、単なる広告成果の一覧ではありません。DSP、CTV、Prime Video Ads、Sponsored Ads、Brand Store、Amazon Retail Purchases、1Pデータをつなぎ、接触順、重複、頻度、NTB、LTV、オーディエンス化まで含めて、通常レポートでは見えにくい問いを深掘りすることです。

最初から10個すべてを分析する必要はありません。まずは「誰に届いたか」「どう効いたか」「次に何をするか」の3問に絞り、広告施策へ戻せる分析から始めるのが現実的です。2026年はAmazon 1PシグナルやPrime Video関連シグナルの活用余地が広がっているため、利用条件を確認したうえで、短期ROASだけでは見えない顧客価値を見に行くべきです。

AMC分析を相談したい方へ

GoalTechでは、Amazon広告、DSP、CTV、Prime Video Ads、GA4、HubSpot、AMCをつなぎ、広告接触から購買・資料DL・問い合わせまでを見える化する設計を支援します。

AMCで何を分析すべきか、NTBやLTVをどう見ればよいか、DSP/CTVの効果測定をどう組み立てるかを整理したい方は、GoalTechのAmazon EC運用支援 からご相談ください。


AMC分析を広告費・DSP運用の改善につなげる

AMCで分析テーマを決めた後は、DSP・Prime Video Ads・スポンサー広告のどこに予算を戻すか、外部パートナーにどこまで任せるかを決める必要があります。費用と予算感はAmazon広告の費用ガイド、運用代行の比較軸はAmazon広告運用代行・代理店の選び方を確認してください。

AMCの最新機能や1PシグナルはAMC 1Pシグナルの記事、DSPとの接続はAmazon DSPとは?で整理しています。

AMC分析とAmazon広告改善を相談する


出典・参考文献