Amazon広告を運用していると、管理画面の数字だけでは判断しきれない問いが出てきます。
たとえば、次のような問いです。
- Sponsored ProductsとDSPの両方に接触した人は、どちらか一方だけの人より購入しやすいのか
- 動画広告やCTV広告を見た人は、その後Amazon内で検索・閲覧・購入しているのか
- 新規顧客はどの商品から入り、その後どの商品を買っているのか
- 自社ECやCRMのデータとAmazon広告の接触データを組み合わせて、次の配信対象を作れるのか
こうした問いを扱うための環境が、Amazon Marketing Cloud(AMC)です。
AMCは、Amazon Ads公式では「プライバシーが守られたクラウドベースのクリーンルーム」と説明されています。Amazon Adsのシグナルや広告主が持つ仮名化データを安全な環境で分析し、広告効果の測定やオーディエンス作成に活用できます。
本記事では、2026年6月21日時点の公式情報をもとに、AMCでできること、料金・利用条件、注意点、EC事業者が最初に試すべき使い方を整理します。
Amazon Marketing Cloud(AMC)とは
Amazon Marketing Cloud(AMC)は、Amazon広告に関するシグナルと、広告主が持つファーストパーティデータを、プライバシーに配慮した環境で分析するためのデータクリーンルームです。
よく「Amazon版GA4」のように説明されることがあります。理解の入口としては近い面もありますが、完全に同じものではありません。
GA4は主に自社サイトやアプリ上の行動を分析します。一方、AMCはAmazon Adsの広告接触、クリック、コンバージョン、購買シグナル、自社データなどを組み合わせ、Amazon広告エコシステム内外の接触を分析するための環境です。
重要なのは、AMCが個人を特定するためのツールではないことです。Amazon Ads公式ページでは、AMCは仮名化された情報のみを受け入れ、利用者が取得できるのは集約・匿名化された出力だと説明されています。つまり、内部ではイベントレベルやユーザーレベルのシグナルを扱えますが、個票データをそのままダウンロードするものではありません。
この前提を押さえると、AMCは「誰か一人の行動を追跡するツール」ではなく、「広告接触と購買行動の構造を安全に見るツール」と捉えやすくなります。
AMCでできること
AMCでできることは、大きく3つに分けられます。
領域 | できること | 実務での使いどころ |
|---|---|---|
効果測定 | 広告接触、重複接触、接触順、頻度、購買までの流れを見る | DSP、CTV、Sponsored Adsの役割を分ける |
データ統合 | Amazon Adsのシグナルと広告主の仮名化データを組み合わせる | 既存顧客、新規顧客、CRM、会員データとの関係を見る |
オーディエンス作成 | 分析結果をもとに配信対象を作る | リマーケティング、除外、類似拡張、入札調整に使う |
たとえば、通常の広告管理画面では、キャンペーンごとのクリック数、広告費、売上、ROASを確認できます。しかし、複数の広告に接触した人の重複、動画広告を見た後にスポンサー広告で購入した人、初回購入後に再購入した人の動きまでは見えにくくなります。
AMCを使うと、こうした「広告ごとの成果」ではなく「ユーザー行動の流れ」に近い形で分析できます。ただし、繰り返しになりますが、出力は集約・匿名化されます。個人単位の行動ログを取り出す前提ではありません。
さらに、Amazon AdsはAMC Audiencesをスポンサー広告でも利用できるようにしたと発表しています。これにより、分析したオーディエンスをSponsored Displayのターゲティングや、Sponsored Products、Sponsored Brandsの入札調整に活用する道が広がっています。
より具体的な分析テーマは、既存記事の AMCでできる分析ユースケース10選 でも整理しています。本記事ではまず、AMCの基本と始め方に絞って見ていきます。
AMCの利用条件:日本でも使えるのか
2026年6月21日時点のAmazon Ads公式ページでは、Amazon Marketing Cloudの利用対象地域に日本が含まれています。
また、2025年9月18日のAmazon Ads公式発表では、Sponsored Products、Sponsored Brands、Sponsored Display、Sponsored TVを運用している広告主が、広告コンソールの「Measurement & Reporting」からAMCへアクセスできるようになったと説明されています。
この点は、古い情報と混同しやすい部分です。2024年10月時点の発表では、スポンサー広告のみの広告主がAMCを使う場合、Amazon Ads登録パートナー経由という説明が中心でした。その後、2025年の発表で、スポンサー広告主向けに広告コンソールからのアクセスが広がっています。
実務では、次の条件を確認しておくと安全です。
確認項目 | 見るべきこと |
|---|---|
広告アカウント | Sponsored Products、Sponsored Brands、Sponsored Display、Sponsored TVなどを運用しているか |
権限 | 広告コンソール内でAMCまたはMeasurement & Reportingにアクセスできる権限があるか |
地域 | 対象マーケットプレイスに日本が含まれているか |
機能 | 使いたいテンプレート、オーディエンス機能、Paid Featuresが表示されるか |
サポート体制 | 自社だけで分析するか、代理店・パートナーの支援を受けるか |
つまり、「スポンサー広告を使っていれば必ず全機能をすぐ使える」とまでは言い切らず、アカウント権限、地域、機能提供状況を確認するのが現実的です。
AMCの料金:何が無料で、何が有料か
AMCについては、「無料で使える」と説明されることがあります。ただし、実務では無料の範囲を分けて理解する必要があります。
Amazon Ads公式ページでは、対象となる広告主はWeb UIとAPI経由でAMCを無償利用できると説明されています。一方で、広告費、Amazon DSPの配信費、外部パートナーの支援費、Paid Featuresの利用料は別です。
整理すると、次のようになります。
項目 | 考え方 |
|---|---|
AMCの基本利用 | 対象広告主には無償提供と説明されている |
広告配信費 | Sponsored Ads、DSP、動画広告などの広告費は別 |
代理店・パートナー費 | 設計、SQL、分析、運用支援を依頼する場合は別 |
Paid Features | Amazon Retail Purchasesなど、一部データセットや機能は条件・料金確認が必要 |
API・システム連携 | 開発・保守コストが別途発生する場合がある |
特に注意したいのが、5年分の購買データに関する説明です。
Amazon Adsは2025年5月23日、Amazon Retail PurchasesというAMCデータセットを発表しました。これは最大5年分のAmazonストア購買データを含むデータセットで、測定やオーディエンス作成に使えると説明されています。ただし、発表時点ではPaid Featuresの文脈で紹介されており、60日間の無料トライアル後に月額料金がかかる説明もあります。
そのため、「AMCなら5年分の購買データを無料で自由に分析できる」と単純化しない方が安全です。どのデータセットを、どの用途で、どの期間、どの料金条件で使えるかは、最新のAmazon Ads公式情報とアカウント画面で確認しましょう。
なお、2025年11月には、AMCの広告トラフィックシグナルの遡及期間を13か月から25か月へ拡張する発表も出ています。これはAmazon Retail Purchasesの「最大5年分の購買データ」とは別の話です。広告トラフィックの年次比較と、購買データを使った長期分析は、用途と対象データを分けて理解する必要があります。
AMCを使う前に押さえる注意点
AMCは強力ですが、万能ではありません。導入前に、次の注意点を押さえておく必要があります。
個票データを取り出すツールではない
AMCは、広告主が個々のユーザーを特定して追跡するためのツールではありません。Amazon Ads公式ページでは、AMCでアクセスできるのは集約・匿名化された出力だと説明されています。
そのため、少数のユーザーに基づく分析や、個人を特定できる形の出力はできません。これは制約であると同時に、プライバシーを守りながら広告分析を進めるための前提でもあります。
SQL不要のテンプレートは増えているが、設計は必要
以前のAMCは、SQLを書ける人向けの印象が強いツールでした。現在は、ノーコード分析テンプレート、低コードテンプレート、Ads Agentによる自然言語でのSQL生成支援などが発表され、使いやすさは大きく改善しています。
ただし、テンプレートが増えても、「何を知りたいのか」が曖昧なままだと分析は施策につながりません。
AMCで重要なのは、SQLそのものよりも問いの設計です。
- 新規顧客を増やしたいのか
- DSPやCTVの役割を見たいのか
- LTVや再購入を見たいのか
- 分析結果をどの広告メニューへ戻したいのか
この問いを先に決めることで、テンプレートやSQLの選び方が明確になります。
Cookie規制だけを理由にしない
既存記事では、サードパーティCookie規制をAMC需要の背景として強く説明していました。しかし、Googleは2025年4月22日、ChromeでサードパーティCookieの新しい単独プロンプトを展開せず、現在のユーザー選択の仕組みを維持すると発表しています。
そのため、2026年時点では「ChromeのサードパーティCookie廃止が迫っているからAMCが必要」と単純に言い切るより、プライバシー規制、SafariやFirefoxを含むブラウザ環境、ファーストパーティデータ活用、広告効果測定の高度化という複数の背景で説明する方が正確です。
AMCの始め方:最初に見るべき3つの問い
AMCを始めるときは、いきなり高度な分析を狙うより、広告判断に戻しやすい問いから始めるのがおすすめです。
1. 広告接触の重複と順番を見る
まずは、Sponsored Products、Sponsored Brands、Sponsored Display、DSP、CTVなどの接触がどのように重なっているかを見ます。
たとえば、DSP接触後にSponsored Productsで購入した人、動画接触後にブランド検索や商品詳細閲覧へ進んだ人などを確認します。これにより、各広告メニューを単体ROASだけで評価せず、ファネル内での役割として整理しやすくなります。
Prime Video Ads、Amazon DSP、CTV広告の違いは、既存記事の Amazon Prime Video Ads・Amazon DSP・CTV広告の違い でも整理しています。
2. 新規顧客と既存顧客を分けて見る
短期ROASだけを見ると、既存顧客への刈り取りが高く評価され、新規獲得の価値が見落とされることがあります。
AMCでは、広告接触後の新規顧客獲得、初回購入商品、再購入、長期価値などを確認する設計ができます。Amazon Retail Purchasesのようなデータセットを使える場合は、より長い購買行動の分析も検討できます。
ここでは、いきなりLTVを細かく計算するより、まず「新規顧客はどの商品から入っているか」「新規顧客を獲得している広告接点はどれか」を見るだけでも有益です。
3. 分析結果をオーディエンスへ戻す
AMCは、分析して終わりではありません。分析結果をもとに、リマーケティング、除外、類似拡張、入札調整などへ戻すことができます。
たとえば、次のような使い方です。
オーディエンス例 | 施策例 |
|---|---|
動画広告に接触したが未購入の層 | Sponsored DisplayやDSPで再接触する |
直近購入済みの層 | 一定期間除外し、広告の無駄打ちを減らす |
高LTV顧客に近い層 | 類似オーディエンスや入札強化を検討する |
商品A購入後に商品Bへ進みやすい層 | クロスセル配信を設計する |
このように、AMCは「レポートを詳しくするためのツール」ではなく、「次に誰へ、何を、どの広告で届けるか」を決めるための環境として使うと効果が出やすくなります。
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GoalTechが支援できること
AMCを自社で触れる環境は広がっています。一方で、実務で成果につなげるには、広告運用、分析設計、SQL・テンプレート選定、オーディエンス活用、LPやCRMとの接続をまとめて考える必要があります。
GoalTechでは、Amazon広告、Amazon DSP、Prime Video Ads、AMC、GA4、HubSpotをつなぎ、広告接触から購買・資料DL・問い合わせまでを見える化する設計を支援しています。
特にPrime Video AdsやCTV広告の効果測定では、AMCで接触後の検索・Brand Store・購買行動を確認し、PVA/CTVの資料DL・問い合わせ導線までつなげて見る必要があります。配信前の設計はPVA広告の基本とPVA広告のKPI設計も合わせて確認してください。
特に、次のような課題がある場合は、AMCを検討する価値があります。
- Sponsored AdsとDSPの役割分担が曖昧
- CTVやPrime Video Adsの成果を短期CVだけで判断している
- 新規顧客と既存顧客を分けて広告投資を判断したい
- LTVや再購入を踏まえて広告予算を配分したい
- 自社EC、CRM、HubSpotのデータを広告施策に活かしたい
AMCを「高度な分析ツール」として単独で導入するのではなく、広告運用の意思決定に戻すところまで設計することが重要です。
Amazon広告やAMCの活用を整理したい方は、GoalTechのAmazon EC運用支援 からご相談ください。
まとめ
Amazon Marketing Cloud(AMC)は、Amazon広告の通常レポートでは見えにくい広告接触、重複、接触順、新規顧客、長期購買、オーディエンス活用を分析するためのクリーンルームです。
2025年以降、スポンサー広告主向けのアクセスも広がり、ノーコードテンプレートやAds Agentなどにより、以前より始めやすい環境になっています。
ただし、AMCは個票データを取り出すツールではありません。出力は集約・匿名化され、利用できるデータセットや機能には条件があります。「無料で全部使える」「AIが自動でROASを上げる」と捉えるのではなく、広告判断に必要な問いを決め、分析結果を次の施策へ戻すために使うのが現実的です。
まずは、広告接触の重複、新規顧客と既存顧客の違い、分析結果のオーディエンス活用という3つから始めると、AMCの価値を実務に落とし込みやすくなります。
次に確認する実務ガイド
AMCを単体の分析環境として導入する前に、週次レポート、広告KPI、LP、HubSpotの接続を整理しておくと、分析結果を施策へ戻しやすくなります。
AMCやAmazon広告レポートを自社データ、LP、HubSpotまでつなげて設計したい場合は、GoalTechにAMC・広告分析の設計を相談する からご相談ください。
出典・参考文献
- 既存記事: Amazon Marketing Cloud(AMC)入門
- Amazon Ads: Amazon Marketing Cloud
- Amazon Ads: Amazon Marketing Cloud now available to all advertisers running sponsored ads campaigns
- Amazon Ads: AMC eligibility expanded to sponsored ads advertisers
- Amazon Ads: AMC Audiences for Sponsored Ads
- Amazon Ads: Analyze and reach custom audiences using Amazon Marketing Cloud's new Amazon Retail Purchases dataset
- Amazon Ads: Unlock historical insights with Amazon Marketing Cloud's expanded ad traffic lookback window
- Amazon Ads: Accelerate Amazon Marketing Cloud workflows with Ads Agent
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- GoalTech: AMCでできる分析ユースケース10選
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※出典リンク、公式発表、内部リンクは2026年6月21日に確認。