Amazon DSPとCTV広告は、単なるテレビCMのデジタル版ではありません。Amazon AdsとNetflixの提携、Prime Video Ads、Streaming TV ads、Amazon Marketing Cloud(AMC)を組み合わせることで、EC事業者は「誰に見せたか」「その後に検索・閲覧・購入へ進んだか」「次にどの広告へ予算を戻すか」まで設計しやすくなっています。

2025年9月10日、Amazon AdsとNetflixは、Amazon DSPを使う広告主がNetflixの広告付きプランのプレミアム広告在庫へ直接アクセスできる提携を発表しました。Amazon AdsとNetflixの公式発表では、対象国に日本が含まれ、提供開始は2025年Q4とされています。さらにNetflixは2026年3月4日、Netflix Ads Suiteの機能拡張として、Amazon DSP経由のプログラマティック買付でAmazon Audiencesを活用できるようにすると発表しました。

本記事では、Amazon DSP×Netflix/CTV広告を、EC事業者が今どう理解すべきかに絞って整理します。Prime Video AdsやCTV広告の基本は Prime Video Ads・Amazon DSP・CTV広告の違い、DSP単体の始め方は Amazon DSPとは?、AMCでの分析設計は AMC分析ユースケース10選 も合わせて確認してください。

Amazon DSP×Netflixで何が変わったのか

今回のポイントは、NetflixがAmazon DSPから買える広告在庫の一つになったことだけではありません。Amazon DSPを通じて、Premium streaming TVの在庫、Amazonのオーディエンスシグナル、AMCを含む測定環境を同じ計画の中で扱いやすくなった点が重要です。

項目

公式発表で確認できること

EC事業者への意味

Netflix在庫

Amazon DSP経由でNetflix広告付きプランの広告在庫に直接アクセス

Amazon広告運用の延長でCTV面を検討できる

対象国

米国、英国、フランス、スペイン、メキシコ、カナダ、日本、ブラジル、イタリア、ドイツ、オーストラリア

日本企業も検討対象。ただし実運用条件はアカウントごとに確認

開始時期

2025年Q4開始

2026年時点では計画・相談対象に入れられる

Amazon Audiences

Netflixの2026年3月発表で、Amazon DSP経由の買付にAmazon Audiences活用を追加

購買・閲覧・ストリーミングシグナルをCTV配信の設計に使う発想が必要

Conversion API

Netflixが成果証明と最適化のためのConversion APIを発表

CTV広告をブランド認知だけでなく成果測定の対象にしやすくなる

注意点もあります。Amazon Ads公式が発表しているのは「Amazon DSPからNetflix広告在庫へアクセスできる」ことです。個別の利用可否、入札方式、最低出稿額、配信面、オーディエンス利用、測定機能は、Amazon DSPアカウント、契約形態、地域、機能提供状況によって変わります。記事や提案書では、公式発表の範囲と自社で確認すべき範囲を分けて扱うべきです。

Amazon DSPで買えるCTV広告の基本

Amazon DSPは、Amazon内外の広告在庫をプログラマティックに買い付けるDemand-Side Platformです。Amazon Ads公式ページでは、Prime VideoなどAmazon独自の面、パブリッシャーとの直接連携、主要SSP経由の第三者在庫にリーチできると説明されています。広告フォーマットは、Streaming TV、オンライン動画、ディスプレイ、音声などを横断します。

Amazon AdsのStreaming TV ad specsでは、Streaming TV adsはテレビ番組、映画、ライブエンタメなどの前後または途中に表示されるフルスクリーン・ノンスキッパブルの動画広告と説明されています。配信面として、Prime Video、Twitch、Fire TV Channels、第三者TVパブリッシャーや放送事業者が挙げられています。

Amazon DSPの配信面

  • Prime Video、Amazon Originals、Amazon.comなどAmazon所有面
  • Twitch、Fire TV、ライブスポーツ、Fire TV ChannelsなどのAmazon関連面
  • Netflix、Roku、Disney、Spotifyなどのパートナー連携面
  • Amazon Publisher Directや主要SSP経由のプレミアム第三者在庫

この広がりにより、Amazon DSPは「Amazon内で購入に近いユーザーを追う広告」だけではなく、「Amazonのシグナルを使ってAmazon外のプレミアム面で認知・検討を作る広告」として設計する必要があります。

なぜ購買シグナルがCTVで重要なのか

CTV広告の弱点は、テレビのように視聴体験は強い一方で、誰に届き、購買にどうつながったかが曖昧になりやすい点でした。Amazon DSPはこの弱点に対して、Amazonの買い物・閲覧・ストリーミングシグナル、Amazon Audiences、AMCを使った測定を組み合わせられる点が強みです。

Amazon Ads公式では、Amazon DSPの差別化要素として、Premium supply、Unique audience signals、AI-powered optimization、Interoperable technologyを挙げています。特にUnique audience signalsでは、Amazonの閲覧・買い物・ストリーミングのインサイトをもとに、従来型の広告識別子だけに依存せずに関連性の高いユーザーへ到達する考え方が説明されています。

EC事業者が考えやすいオーディエンス例

目的

オーディエンス設計例

見る指標

新規認知

カテゴリ関心層、ライフスタイル関心層、競合カテゴリ閲覧層

リーチ、視聴完了、検索増、Brand Store訪問

検討促進

商品詳細閲覧済みだが未購入、Brand Store訪問済み、関連カテゴリ比較層

商品詳細ページビュー、再訪、Sponsored Ads接触

新規顧客獲得

既存購入者を除外し、NTB化しやすいカテゴリ関心層へ配信

NTB率、初回購入商品、許容CPA/ACOS

LTV拡張

高LTV顧客に近い購買・閲覧傾向を持つ層

再購入、カテゴリ横断購入、90日/180日売上

通常のテレビ出稿では「番組」「GRP」「認知調査」に寄りがちです。一方、Amazon DSP×CTVでは、視聴後の検索、Amazon内行動、商品詳細閲覧、Brand Store訪問、Sponsored Ads接触、購買までをつないで見る前提を作れます。

Netflix Ads Suiteの2026年拡張で見るべき点

Netflixは2026年3月4日、Netflix Ads Suiteの機能拡張を発表しました。Jina Reader経由で取得したNetflix公式発表では、Amazon DSPとYahoo DSPを通じた拡張ターゲティング、Amazon Audiences、Conversion APIが説明されています。

Amazon AudiencesをNetflix買付に使える

Netflix公式発表では、Amazon AudiencesはAmazon独自のショッピング、ストリーミング、ブラウジングシグナルから構築され、ライフスタイル、関心、現在アクティブに買い物している商品に基づいてNetflixメンバーへリーチするために使えると説明されています。開始は米国で2026年Q2、他の広告付き対象国へは同年内に展開とされています。

さらに2026年5月のNetflix Upfront発表では、Amazon DSP上のプログラマティックオーディエンスターゲティングを、2026年6月1日までにすべての広告付き対象国へ広げる旨も説明されています。日本での実運用条件は各アカウントで確認が必要ですが、少なくとも公式発表上は、日本を含む対象国でAmazon DSP×Netflixの計画を立てる根拠が出ています。

Netflix Conversion APIで成果測定へ寄せる

Netflixは同発表で、Conversion API(CAPI)を、広告主が成果を証明し、リアルタイムのインサイトでキャンペーンを最適化するためのAPIとして説明しています。早期テストでは、金融サービス、EdTech、小売のクライアントでベンチマークを75%以上上回ったとNetflixは発表しています。ただし、この数値はNetflixの早期テストの結果であり、自社カテゴリや日本市場で同じ成果を保証するものではありません。

EC事業者にとって重要なのは、CTV広告を「見せて終わり」にしないことです。CAPIやAMC、GA4、HubSpot、Amazon内レポートを組み合わせ、視聴後の行動をどこまでつなげるかを先に決めます。

AMCでどう測るか:CTV後の行動を分解する

Amazon DSP×Netflix/CTV広告を実施するなら、配信前に測定設計を決めます。おすすめは、認知指標、検討指標、購買指標、営業指標を分けることです。

段階

見る指標

主な確認先

認知

リーチ、インプレッション、動画完了、頻度

Amazon DSP、Streaming TVレポート

検討

検索増、商品詳細ページビュー、Brand Store訪問、LP訪問

Amazon Ads、AMC、GA4

購買

購入、NTB、ACOS/ROAS、入口商品、再購入

Amazon Ads、AMC、Seller/Vendor側データ

商談

資料DL、問い合わせ、商談化、HubSpot上の接点

GA4、HubSpot、広告UTM

AMC側では、CTV接触者と非接触者、接触頻度別、DSP接触後にSponsored Productsへ進んだ層、Brand Store訪問後に購入した層、NTB/既存顧客別などに分けて見ます。詳しい分析テーマは AMC分析ユースケース10選 に整理しています。

最初に答えるべき5つの問い

  1. CTV広告の目的は認知、検討、購入、再購入のどれか
  2. Prime Video、Netflix、Twitch、Fire TV、第三者面のどれを優先するか
  3. 新規顧客を増やしたいのか、既存顧客の再活性なのか
  4. 動画接触後に、検索、商品詳細、Brand Store、LP、問い合わせのどれを中間CVにするか
  5. 結果をDSPリマーケティング、Sponsored Ads入札、除外、クリエイティブ改善のどこへ戻すか

クリエイティブ・予算・運用体制の注意点

Amazon DSP×CTV広告は、検索広告やSponsored Productsと同じ感覚で始めると失敗しやすい施策です。クリック前提の広告ではなく、テレビ画面で数秒以内に伝える広告だからです。

動画クリエイティブの最低チェック

  • 冒頭3秒以内にブランド名または商品カテゴリが分かる
  • 商品、利用シーン、ベネフィットが音声なしでも伝わる
  • Amazonで購入できる、資料請求できる、比較できるなど次の行動が明確
  • テレビ画面で読める文字量に抑える
  • 配信面ごとのアスペクト比、ビットレート、審査条件を確認する

Amazon AdsのStreaming TV ad specsでは、Amazon streaming TV adsはPrime Video、Twitch、Fire TV Channels、第三者TVパブリッシャー等に表示されると説明され、動画素材のビットレート要件にも触れています。実制作では、広告審査、音声、字幕、ロゴ、CTA、商品訴求を事前に確認します。

費用と代理店確認ポイント

Amazon DSPにはセルフサービスとマネージドサービスがあります。Amazon Ads公式FAQでは、マネージドサービスはAmazon DSP在庫へのアクセスやコンサルティングサービスが必要な広告主向けで、通常は最低出稿額が必要と説明されています。国によって条件が変わる可能性があるため、日本での実額はアカウント担当または代理店に確認します。

代理店へ依頼する場合は、以下を必ず確認します。

  • Amazon DSPの運用権限とレポート閲覧権限をどこまで共有するか
  • Prime Video、Netflix、Twitch、Fire TV、第三者面をどの粒度で分けてレポートするか
  • CTV接触後のAmazon内行動、GA4、HubSpot、AMC分析をどこまで見るか
  • 動画制作、入稿、審査、改善サイクルを誰が持つか
  • Sponsored Ads側の入札・予算・除外へどう反映するか

費用感の整理は Amazon広告の費用ガイド、代理店選定は Amazon広告運用代行・代理店の選び方 を参照してください。

最初の30日で進めるAmazon DSP×CTVテスト設計

最初から大きな予算でNetflix/CTV全面展開を狙うより、30日で検証可能な問いに絞る方が現実的です。

期間

やること

成果物

Day 1-3

目的と対象商品を決める

新規獲得、検索増、Brand Store訪問、購入などの優先順位

Day 4-7

オーディエンスを決める

Amazon Audiences、既存顧客除外、カテゴリ関心層、リマーケティング条件

Day 8-14

動画とLP/Store導線を整える

動画素材、CTA、商品詳細ページ、Brand Store、UTM

Day 15-21

配信と初回レポートを確認する

リーチ、頻度、視聴完了、検索/閲覧の初期変化

Day 22-30

AMC/GA4/HubSpotで次の打ち手へ戻す

除外、リマーケティング、Sponsored Ads入札、クリエイティブ改善案

この30日設計では、Netflixだけを単独で見るのではなく、Prime Video Ads、Streaming TV、Sponsored Ads、Brand Store、Amazon DSPリマーケティングまで含めて「次の予算配分」を決めます。

Prime Video AdsやCTV広告を含むテストでは、媒体費だけでなく、動画制作、最低出稿、測定費、代理店手数料を分けて見る必要があります。PVA単体の費用感を先に整理する場合は、PVA広告の費用はいくら?CPM・最低出稿額・制作費の考え方も確認してください。

まとめ

Amazon DSP×Netflix/CTV広告は、EC事業者にとって、Amazon内の購買データとテレビ画面のリーチをつなぐ選択肢です。2025年のAmazon Ads/Netflix提携、2026年のNetflix Ads Suite拡張、Amazon DSPのPremium supplyとAudience signals、AMCでの分析環境を合わせると、CTV広告は認知施策だけでなく、検索増、商品詳細閲覧、Brand Store訪問、NTB、LTVまで見に行く施策として設計できます。

一方で、費用、在庫、オーディエンス、測定、運用体制はアカウントごとに確認が必要です。まずは目的、対象商品、オーディエンス、測定指標、動画クリエイティブ、Sponsored Adsへの戻し方を30日単位で設計し、小さく検証するのが現実的です。

Amazon DSP・CTV広告を相談したい方へ

GoalTechでは、Amazon DSP、Prime Video Ads、Netflix/CTV広告、AMC、GA4、HubSpotをつなぎ、認知から検索・購入・問い合わせまでの広告設計を支援します。

Amazon DSPを自社で始めるべきか、Netflix/CTV広告にどの程度予算を投じるべきか、Sponsored AdsやAMCとどうつなぐべきかを整理したい方は、GoalTechのお問い合わせフォームからご相談ください。


動画広告・DSPを検討する前に

Prime Video Ads、CTV、Amazon DSPのような上流施策は、配信面だけでなく、目的、予算、クリエイティブ、計測、運用体制を分けて設計する必要があります。基本は Prime Video Adsのガイド、PVA・DSP・CTVの違いは PVA広告・Amazon DSP・CTV広告の比較、DSP単体の始め方は Amazon DSPの解説 を確認してください。

費用感を確認する場合は Amazon広告の費用ガイド、外部支援を検討する場合は Amazon広告運用代行・代理店の選び方 が参考になります。AMCでCTV接触後の行動を見る場合は AMC分析ユースケース10選 も合わせて確認してください。


出典・参考文献