2026年3月4日、AmazonのBSA(Business Solutions Agreement=事業者向け利用規約)が大幅に改定されます。最大の目玉は、AIエージェントや自動化ソフトウェアの利用を厳格に管理する「Agent Policy」の新設です。

【日本のセラーへの注意】 本記事で解説するBSA改定およびAgent Policyは、主に米国・カナダ向けBSAに対する変更です。Amazon.co.jp(日本マーケットプレイス)のセラーには日本版BSAが別途適用されます。2026年3月3日時点で、日本のセラーセントラルに同一内容の改定通知は確認されていません。ただし、Amazonのグローバルな方針転換を反映するものであり、日本市場への波及も十分に想定されます。利用中のツールの安全性確認は日本のセラーにとっても有益です。

価格改定ツール、在庫管理ツール、広告自動化ツール――日常的に使っている自動化ツールが、ある日突然使えなくなるかもしれません。本記事では、今回のBSA更新の背景から具体的な対策まで、セラーが押さえるべきポイントを解説します。

Amazonが「スクレイピング全面禁止」に踏み切った背景

2026年3月4日、AmazonのBSA(Business Solutions Agreement)が大幅改定されました。Amazonは公式モデレーターアカウント「News_Amazon」を通じてSeller Centralフォーラムで発表。最大の目玉は、AIエージェント・自動化ソフトウェアを管理する「Agent Policy」の新設です。

なぜ今、Amazonはここまで踏み込んだのでしょうか。

第一に、AIエージェントの急速な普及があります。 2025年後半から、AI技術の進化によって「人間の代わりにECサイトを操作するAIエージェント」が急増しました。象徴的な事件が、2025年10月〜11月のAmazon対Perplexityの法的措置です。Amazonは2025年10月31日にPerplexityに停止通告書(Cease and Desist)を送付し、11月4日にはカリフォルニア州北部地区連邦地裁に訴訟を提起しました。PerplexityのAIブラウザ「Comet」が、ユーザーの代理としてAmazon上で商品検索・購入を自動実行しながら、Google Chromeブラウザに偽装してアクセスしていたことが問題視されました

第二に、Amazon自身のAI戦略との関係です。 AmazonのAIショッピングアシスタント「Rufus」は2025年中に3億ユーザーに到達し、年間約120億ドルの増分売上(incremental annualized sales)をもたらしたと報告されています。AmazonはRufusやAmazon Ads MCP Serverなど、自社公式のAI基盤を整備しながら、サードパーティの非公式なデータアクセスを締め出す方向に舵を切っています。

第三に、データの不正利用が深刻化していたことです。 サードパーティのツール開発者が、Amazon上の価格履歴・レビューデータ・カタログ構造などを大規模に収集し、独自のインテリジェンスシステムを構築していました。

なお、今回の改定にはオプトアウト(拒否)の仕組みがありません。3月4日以降もSeller Centralを継続利用した時点で、改定後の規約に自動的に同意したものとみなされます。

新Agent Policy 3つの鉄則 違反即アカウント停止のリスク

今回のBSA改定で新設されたAgent Policyは、3つの義務を課しています。

鉄則1:自動システムとしての自己識別

すべてのAIエージェントや自動化ツールは、常時、自動化されたシステムであることを明示しなければなりません。ただしAmazonは具体的な技術仕様を一切示していない点が課題です。

鉄則2:Agent Policyの常時遵守

エージェントはAgent Policyに例外なく、継続的に準拠する必要があります。

鉄則3:Amazon要求時の即時アクセス停止(キルスイッチ)

Amazonがアクセス停止を要求した場合、エージェントは即座にアクセスを中止しなければなりません。Amazonは事前通告なくツールのアクセスを遮断できる裁量権を持っています。

AI開発・データ収集も規制対象に

BSA本体にも重大な変更が加えられました。

  • Amazonの資材("Our Materials")を使ったAIモデル訓練の禁止
  • リバースエンジニアリング・データマイニングの禁止
  • サードパーティによる独自AIプロダクト開発を契約上完全にブロック

使えなくなるツールは?注意すべきポイント

ここでは、Agent Policyの影響を受ける可能性があるツールをリスク別に整理します。自社で利用中のツールがどのカテゴリに該当するか確認してください。

カテゴリ

具体例

リスク度

スクレイピング系リサーチツール

レビュー収集、競合カタログ監視、価格追跡

ブラウザ自動化ツール

Seller Central操作自動化、注文データ自動取得

AI搭載広告最適化ツール

独自アルゴリズムによる入札自動調整

中〜高

価格改定ツール

API経由の場合は低リスク

低〜中

在庫管理・FBA関連ツール

API経由の場合は低リスク

低〜中

FBA払い戻し請求代行

GETIDA等のアカウント管理代行

要確認

対応済みツールはアナウンスしているケースも

「プライスター」はX上で「Amazon様に確認し問題ないことを確認済み」と表明。Amazon公式APIを利用しているかどうかがツールの安全性判断の分かれ目です。

まとめ

今回のAgent Policyは、Amazonが「プラットフォーム上のAI利用をAmazon自身がコントロールする」という意思表示です。 曖昧さが残る部分もありますが、だからこそ「明らかにNGな運用」を先に止め、ツール提供元へのコンプライアンス確認を急ぐことが重要です。Amazonからの追加ガイダンスが発表され次第、本記事も更新していきます。


※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的アドバイスではありません。


出典・参考文献:

  1. Amazon Seller Central フォーラム
  2. Amazon Seller Central「Agent Policy」
  3. Amazon Seller Central「BSA Changes」
  4. プライスター公式X
  5. TechCrunch
  6. Amazon Ads MCP Server